鎖#17
- 2018/11/02
- 08:53
前回 最初へ
放課後、俺は相談室へ入った。
明崎さんはこんなときでもティータイムを欠かしてはおらず、片づけを手伝わされ、それから2人で駐車場へと向かった。
明崎さんの車はなんというか、いかにも走ってますって感じのイカツイ黒い車でウイングやバケットシートまで付いている。
「ああ、これ? あんまり深いところまでつっこまなくていいよ」
「お兄さんか弟さんが乗ってた車ですか?」
「いや、妹ならいるけどこれは私のだよ。私にだってやさぐれてた時期もあるし、若気の至りってやつかな」
それって今なんじゃないのか? というツッコミはやめておくか。
俺と大きくは年齢に差がないはずだ。
車からチューニング代までどこでどう用意してきたんだろうか。
まあいい。車に乗り、バケットシートに座ると助手席とはいえなんかレーサー気分だ。
さすがに飛ばしはしなかったが目的地まで適度な速度で向かっていく。
「どこ行くんですか?」
「ちょっとドラッグストアに用事ができてね」
「ドラッグストア?」
「ん? 何か不満? 他に行きたいところがあるならそんなに時間は取れないよ?」
「あ、いや、そうじゃなくて、堀内先生の話じゃないんですか? 学校で言えないような。だからこうしてドライブしてるんじゃないかと」
「……それもあるけど、ドラッグストアに用事があるのは本当。だったら仕事終わってから行けって話になるけどさ、いろんなことを考えると今しかないのよね」
「堀内先生って、何かあったんですか?」
「……まあ、まあ、今はそう焦らなくてもいいわよ。後でちゃんと教えてあげるから」
やっぱり何かあるんだな、堀内先生。
確かにちょっと怪しいよな、他にも生徒間の問題があるだろうに山谷さんの件を自ら進んで引き受けるなんてな。
一見何も不自然な点がないように思うが、今になると何か怪しい。
ドラッグストアへ入ると、明崎さんは真っ先に紅茶のパックを大量にカゴへ入れた。
1日何杯飲むんだこの人。ほとんど買い占めたぞ。
それからホットケーキにでもかけるのかハチミツを買ったり、おやつのチョコレートを買ったり、用事というよりはただの買い物だな。
これくらいだったら仕事終わってから行けばいいと思うんだが、今しかないってどういうことだろうか。ティータイムは終わったんじゃないのか?
なんて思っていたら、何の薬か小さな箱が並べられた棚の前で足を止めた。
極薄、0.02ミリ、うすぴたリアルフィット……って、おいおい、コレって!!
「あ、あの、明崎さん?」
「なあに?」
「つかぬ事お聞きしますが、コレってもしかすると、もしかしなくてもアレですよね?」
「アレって? ちゃんと言ってくれないとお姉さんわかんない」
「言えと? 俺に言えと?」
「うん」
言えるか!! なんでコンドームなんか見てるんだよ!?
誰と!? なんで俺がいる目の前で!? ま、まさか、俺!?
ま、まあ、明崎さんかわいいし……って、そうじゃないそうじゃない!
常識的に考えてドラッグストアの買い物に付き合わせてコンドームを吟味する理由は一つしかない。しかし、俺は学生で、明崎さんはスクールカウンセラー。
いくらなんでも唐突すぎるし、何を考えてるんだこの人は。
「なんかいろいろ考え込んじゃってかわいい」
明崎さんはニヤニヤ笑いながらコンドームをカゴへ入れやがった!
「ちょっ、ちょっと!? 明崎さん!?」
「こういうのはね、隠そうとすると逆に目立つから堂々としてればいいのよ」
おいおい、やべえぞこの人。しかし、ドキドキが止まらないのは否定しない。
あれ? そういえば、なんだっけ?
ドラッグストアに用事があるって言って付き合ったのはいいとして、堀内先生の話はどこに行った?
後で説明するって、いったいどういう状況でどう説明されるんだろうか。
続き
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